仕事の質が悪かろうが、その賃金を引き上げろ

今日は最初に、派遣の話、その後で警備バイトの話をしたい。この二つは、仕事の質という点で違いがあるが、ともに現状よりも大幅に賃金を上げる必要がある点においては同じである。

正社員に比べて時給換算で半分以下の派遣を、賃金上げのモチベーションを与えないまま延々雇い続けている企業というのは、たいてい、先細りの企業だと思う。誰が始めた事業かわからず、利益も上がっていないが、事業を止める決心もつかず、とりあえずこの仕事を維持しなければならない、という、ほとんどとばっちりを受けているような被害者感覚で、派遣の費用を予算に組み込んでいる現場が多いはずだ。彼等にとっては派遣のコストを抑えることは義務であり、それによって効率が悪くなろうが構わないのだ。どうせ、見込みのない事業なのだから。

先行きに自信がないから、思い切った事務の効率化もできない。IT投資も中途半端になって、そこかしこに古臭い紙の業務が残ってしまっている。一日のうち、社員は3分の1ぐらい、派遣は半分以上の時間、紙を動かしている。

私の狭い観測範囲ではあるが、派遣の同僚たちは、そういう紙仕事にはうんざりしていて、本当はもっと効率的に働きたいと思っている。派遣が紙を動かしている時間は正社員に比べると多いが、正社員と同じ仕事に踏み込んで働いている時間もそれなりにある。同僚たちはもっと責任を負う能力も意欲もあって、賃金上げは彼女たちのモチベーションになる。

企業がそういう能力を無駄に腐らせているのは本当にもったいないと思う。

一方、警備バイトのダンナの同僚の方はというと、ダンナが良く言うのは「右を向けつっても左を向いてしまうような、どうしようもない、他に何もやれないようなのがワンサカいる」ということだ。

しかし、こういう人たちでも子供を育てられるようであるべきだ。人道的観点からもそう思うし、経済的観点からもそう思う。なぜなら彼らがきちんと稼いで税金や、高齢者になったときに年金をそれなりにもらえるぐらいに保険料を払うことでしか、社会保障は維持できない。

彼らの仕事の能力が低いからといって、安く使っても、別に社会は幸せにならない。企業経営者や株主に金が集まるだけで、そうした金持ちたちが余計に税金を払って社会に貢献するかというとそういうわけでもない。

いまでも、警備バイトでもローン組んで家を買い、子供を育てる人もいて、そういう人たちは何昼夜も「連投」する。彼等の働き方がどうして労基に引っかからないのか不思議でならないが、週100時間は超えてるはず。「シフト」扱いで残業割増もない。

長時間労働規制がもし実現されるて、時給がそのままだと、彼等は生活がたちいかなくなる。長時間労働が規制されたとき、「生活できなくなる人がいる」といって規制に反対する人が出てきそうだ。

長時間労働規制は、最低賃金上げとセットでなければならない。仮に警備バイトの労基違反を解消して残業代割増をしたとしても、それでも彼らが長時間労働を止められるほどではない。

彼等の時給は都心で1000円なので、もしも最低賃金を全国で1500円にしたら、その辺の時給は1700円とか1800円になるのではないか。少なくともそれぐらいにしないと、都心で子どもを育てられないのではないか。

私の中では、企業を効率化して正社員と非正規の同一労働同一賃金を進める話と、どんなに求められる質が低い仕事であっても、現在よりも相当高い賃金にしておかないといけない、という話は、両方とも矛盾がなく存在している。

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