ダメなアベノミクス批判―「アベノミクスは格差を拡大するから、経済成長をめざさない方がいい」

表題の批判がなぜダメかというと、格差を拡大させない経済成長の仕方があるからだ。たとえばスウェーデンは、先進国の中でもっとも格差が少ない社会の一つだが、経済成長している。

このように、社会保障の充実した格差の小さい国で経済成長が重要視され、実際に成長している実例があるからには、経済成長=格差拡大だから悪である、という論は成り立たない。

では経済成長しなくても、増税して社会保障を強化できるのではないか、その方が、経済成長をめざすよりも良いのではないか、という人がいるかも知れない。

しかし、去年、日本では、経済成長しないうちに増税して、社会保障費を強化しようとした。そこで起こったことは、低所得者層の急激な消費減だ。すでにギリギリの生活をしている人たちまで巻き込んで、景気が悪化して、税収は増税しない場合に得られたであろう収入よりも減っってしまった。そんなことで、社会保障を強化もしくは維持し続けられるのだろうか。

とはいえ、アベノミクス批判はすべきだ。なぜならアベノミクスは、リフレといいながら実は財政再建という目的を内包しており、再分配は後回しになっているどころか、自己責任論や生活保護不正利用論などを振り回す一部の国民の機嫌を取るために、安易に社会保障を縮小させている。近代国家が達成すべき公共の姿を、国民とともにつくりあげる努力を放棄しているように見える。

当面、日本に必要なことは、空想上の財政規律に縛られず、まず財政支出をしっかり行なうことである。社会保障費と増税の紐づけを断ち切り、低所得者もしくは無所得の者の生活を支えた上で、企業が設備投資をしたくなるまで、賃金と消費の循環を国が率先して創り出すことだ。

空想上の財政規律の縛りをなくした場合に、国がどのような公共事業を行うべきかについては、当初はありきたりの公共投資を行いながら、いろいろと試行錯誤していくしかないだろうが、国民の方でも、そうした空想的規律を取り払って考える癖をつけてはどうだろうか。



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