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派遣労働者保護に舵を切る労働者派遣法改正案

去年8月に、「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」報告書が発表されました。それを受けて今年3月11日、改正案が閣議決定され、予定では今国会で成立、来年4月から施行となっています。

この改正案の方向性については、どうも多くの人に誤解されているように思います。わたしもいろいろと調べてみるまで、派遣期間の制限などについて、趣旨をまったく理解していませんでした。

hamachanブログ『Vistas Adecco』36号の記事がアップされましたを見て、「有期雇用(契約)の派遣労働者の場合、3年を超える派遣では派遣先企業内で労使双方が同意すれば、同じ職場で派遣労働者を受け入れることができる。ただし3年ごとに人を交代させる必要がある。」ってどういうこと??と、頭の中はまったくハテナ状態でありました。

調べてみると、派遣が日本の労働環境を悪化させるかというと、これまでの私自身のイメージとは異なり、必ずしもそうはならないとの印象が強くなってきました。

とにもかくにも、改正法案の趣旨をまったく誤解したままでは話が成り立ちません。

今回手がかりとしたのは次の三つです。

法改正で派遣はこうなる!―週刊東洋経済eビジネス新書No.33 [Kindle版]

今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会報告書(平成 25 年8月 20 日) 概要(PDF)

2013年8月22日 第33回労働政策審議会審議会議事録 |厚生労働省


週刊東洋経済eビジネス新書の記事はわかりやすかったです。Kindle版が100円でダウンロードできるのでおススメ。

しだいにわかってきたことは、これまでの派遣法は、正社員の派遣化を防ぐことがもっぱらの趣旨とされていて、決して派遣の正社員化・無期雇用化をめざしたものではなかった、ということです。

たとえば、期間を経過した派遣業務について、現場の他の正社員(労組またはそれに相当する立場の者)に、意見を聴くように定められています。このプロセスでは、正社員数を減らして派遣は残すという方向になるのを、労組が阻止する、という役割が期待されています。

あくまでも、正社員から派遣への置き換えを防止することに主眼があって、派遣側の保護が目的であるわけではありません。

一応、法律には「当該同一の業務に労働者を従事させるため、当該三年が経過した日以後労働者を雇い入れようとするときは、当該同一の派遣労働者に対し、労働契約の申込みをしなければならない。」といった一文があるのですが、派遣先企業はあれこれと工夫して、結局直接雇用を避けてしまいます。

それでは、直接雇用させることを強制する法律にすればいいではないか、となりますが、企業側がそれほど頑固に嫌がっているもの、つまり強制すればただちに経営が厳しくなると考えられているものを、自由経済においていったい強制できるものなのか、ということが疑問ですし、それにそもそも、いまのように不確実性が高く、成長産業が時々刻々とかわり、人々の価値観が多様である社会で、そんな強制は時代に合っているのかどうかも疑問です。時代にそぐわないものを無理に制度化すると、結局のところ、しわよせは弱者に行ってしまうものです。

なぜ企業がこれほどまで頑なに、派遣の正社員化をこばむのかといえば、不確実性の高い時代にあって、いつ取り止めるかわからないような業務に、日本的雇用慣行の枠内での正社員を雇いたくはないからでしょう。

企業の直接雇用への忌避感について、週刊東洋経済の記事によく描写されています。

10年3月、当時の民主党政権が作成した「専門26業務派遣適正化プラン」に基づき、全国の労働局の指導官が派遣先企業へと実態調査に入った。(略)指導官は、業務がこの基準に合わないと判断した場合、容赦なく派遣契約の終了を迫った。
これに驚いたのが派遣先だ。(略)突如、「違法派遣」だと指導されるようになったためだ。そのうえ民主党改正案の柱の一つである、違法派遣時の派遣先の「労働契約申し込みみなし制度」が導入されれば、派遣先は単なる「顧客」だったはずが一転、雇用主責任に直面する。これを恐れた派遣先からは契約解除が相次ぎ、ある大手派遣会社では9割を占めた26業務は6割まで落ちた。
(略)
その後も「『派遣は怖い』との印象が強く、顧客が戻らない」(関係者)でいる。



上で書かれたのは専門26業種の派遣についてなので、景気循環にともなって雇用調整が必要なものなのかどうか、ちょっとわからないのですが、この描写からは、景気循環にともなった調整が必要となりそうな業務に対しても、企業はもはや、正社員を増やして対応しようとはしなくなったことは確実です。派遣を切った企業は、おそらく既存の社員でやりくりしたか、どうせ直接雇用になるならと、バイトかパートに流れたかも知れません。

結局企業としても人を雇いたくないわけではない。「景気が続く限り、その事業で採算性が確保できる限り」人員をそこに雇いたいわけなのです。

それは、アルバイトやパートでなく、派遣であるべきなのでしょうか?とりあえず専門的人材の確保や、給与管理のアウトソースといったところで、企業が派遣を選択する理由はあるでしょう。

ともかく今回の改正案では、派遣先企業に対しては、業務内容に関わらず、派遣される労働者が派遣元と無期雇用であれば、派遣先の期間への制約はなくなることになりました。

(3)常用代替防止の再構成
○ 有期雇用派遣は、間接雇用かつ有期雇用であるため、派遣労働者の雇用の不安定性、キャリアアップの機会が乏しい、派遣先での望ましくない派遣利用の可能性、拡大しやすい性質といった特徴があることから、一定の制約を設け、無限定な拡大を抑制していくことが望ましい。
○ 常用代替防止の考え方は、今後、対象を有期雇用派遣に再整理した上で、 個人が特定の仕事に有期雇用派遣として固定されない、また労働市場全体で有期雇用派遣が無限定に拡大しないという個人レベルの常用代替防止
派遣先の常用労働者が有期雇用派遣に代替されないことという派遣先レベル
の常用代替防止
の2つを組み合わせた考え方に再構成。
○ 無期雇用派遣は常用代替防止の対象から外すが、無期雇用の労働者にふさわしい良好な雇用の質の確保を図っていくことが望まれる。

今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会報告書(平成 25 年8月 20 日) 概要より



派遣労働者から見れば、その企業の事業が続く限り、同じ職場で同じ業務に携われることになります。仮に同一賃金同一労働が実現したとしても、やはり、一つの職場に習熟するほど、労働者の生産性は上がりますから、企業にとっても労働者にとっても長く続いた方が益は大きいものです。

今回の改正で、派遣先企業の「その事業で採算性が確保できる限り、人員をそこに雇いたい」というニーズを満たし、派遣労働者側の「無期で働く」という必要も満たそうというのですから、悪い方向性とは思えません。

では採算性が確保できそうになくなって、バンバン人を切り始めたらどうなるか?本来、その会社の経営者含めた全員で給与を分け合ってやりくりできたかも知れないのに、経営者は自分の利益だけは確保して、弱い派遣を切ってしまうんではないでしょうか?

それに対しては、国レベルで適切に貨幣の供給がなされて、雇用の量が維持できるなら、人々の移動先も確保されるはずだ、という答えがあります。企業が人を切る、ということは、その企業や事業には将来性が見込めなくなっているのです。だから別の事業で人が雇われるのが望ましい姿です。貨幣量の増加によって、社会全体に雇用を確保できる理論については、こちらに紹介されています。古谷利裕さんの日記2013-12-12
社会を構成する人々の間に適切に金を回し、雇用を維持することは重要な国家の役割です。

残る問題は相変わらず有期の制約がある、派遣元と有期契約になる労働者です。これについては、派遣元に対するより強い教育義務と、無期雇用へ誘導する義務がうまく働けばよいでしょう。

もちろん、正社員との待遇差の解消は、引き続き重要な課題です。しかしそれは、派遣労働者を保護しないからといって、解消できるというものでもありません。(正社員からの置き換えを防ぐことしか実現しない制度というのは、派遣労働者の保護をないがしろにします)

派遣が間接雇用だからといって、今後もずっと悲惨な扱いだ、と決まっているわけでもありません。派遣が単なるバイトの置き換えでなく、業務のオンサイト請負型になるなど、派遣先企業側にメリットを与えつつ、労働者の地位向上にもつながるビジネスモデルの可能性は、それなりにあると思いますし、パソナなどもそうしたビジネスモデルをめざしています。

今後、金融緩和が実際に効果を発揮し、雇用が増加し景気が回復していく中で、雇用調整金は必要なくなっていくでしょう。その替わり、ということでもないですが(別にそれはそれ、これはこれでもよいのですが)、しっかりと雇用支援金を積んで、労働者が生活に支障なく雇用教育を受けられて、新規雇用や再就職や待遇改善につながる仕組みを構築しなければならないです。

北欧で実現されている「失業なき雇用移動」という価値観に、日本も早く慣れていく必要があるでしょう。
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