安い牛丼や洋服が、日本型の福祉ですって?

PRESIDENT2013年12月16日に、津田大介×古市憲寿×田原総一朗という顔ぶれの対談が掲載されています。
その中で、古市憲寿氏の次の発言を見て、わたしはメガテンになりました。

【古市】なるほど、すき家はいいですよね。牛丼やファストフードのチェーンは、じつは日本型の福祉の1つだと思います。北欧は高い税金を払って学費無料や低料金の医療を実現しています。ただ、労働規制が強く最低賃金が高いから、中華のランチを2人で食べて1万円くらいかかっちゃう。一方、日本は北欧型の福祉社会ではないけれど、すごく安いランチや洋服があって、あまりお金をかけずに暮らしていけます。つまり日本では企業がサービスという形で福祉を実現しているともいえる。


え?

牛丼やファストフードのチェーンが、日本型福祉???

「すごく安いランチや洋服」が、日本型福祉ですと!??

モノが安く提供されているということは、労働力が安価に提供されているということです。牛丼、ファストフード、安価な洋服……そこで働く人々の賃金はどうなっていると思ってるんですかね。

低賃金で働く人たちは、おカネがないから、買うモノがどうしても少なくなる。

買わないんじゃないんです。
「買えない」のです。
ちなみにですがこれが、「需要不足」と言われるものです。
おカネがないから買えない=需要が生まれていない状態。

その結果、社会はどうなっていますか?

一つの見方として、自殺率を見て見ます。
人口10万人あたり、年間に何人が自殺しているか。

ここに、年齢層別の自殺率(男子)のグラフがあります。
推移
(元URL:http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/2760.html

抹茶っぽい色の線が、80歳以上の人の自殺率、いちばん下の方の、水色っぽい線が20~24歳の人の自殺率です。

80歳以上の人は、1945年頃まで自殺率は高かった。そこから一気に下降して、現在では他の年齢層と同じ率になっています。

20~24歳の人の自殺率は、バブルの最高潮、1992年頃に最も低くなっており、そこからどんどん上昇して、今では全年齢層の平均に達しようとしています。

※念のためですが、自殺率は人口10万人あたりの自殺数ですから、単純に自殺数を比べた場合には、見た目の印象は異なるグラフになります。

考えてみてください。牛丼、ファストフード、安価な洋服屋で低賃金で働く人はどんな人でしょうか?若者が多いのではないでしょうか。そして、非正規も多いでしょう。

このグラフを見れば、安価なモノやサービスが日本型福祉だなどと安易に言えないはずです。

80歳以上の人の自殺率は減少しています。
長寿化は大きく影響しているでしょう。基本的には、経済状況や健康状態に不安がなく、暮らしが安定すれば、自殺は減るのです。
高齢者は暮らしも比較的安定しています。現在の日本では再分配すればするほど、格差が拡がる状態になっています。さまざまな高齢者向けの施策により、高齢者世帯に多く配分されるようになっているのです。

なお、核家族化が進み、独居老人も増えましたが、それは自殺率に大きく影響していないのでしょう。むしろ、同居の方がストレスが高く、自殺しやすいことが考えられます。実際、昭和51~54年で、独居老人の自殺率に比べて、同居老人の自殺の方が1.6倍多いというデータがあります

参考:核家族化推移グラフ
(元URL:http://d.hatena.ne.jp/Pada/20110824/1314188056
kakukazoku.jpg


このところ、自殺数が年間3万人を切ったということですが、こうしたグラフの傾向を見れば、人口に占める割合が多い高齢者層の自殺が減っているということは可能性として考えられます。

それだと、少し減ったとしてもちっとも安心できません。

経済的余力のある人数が多い高齢者が増えて自殺数の総数が減ったからといって、若者が十分にモノを買えない状況を放置していいのでしょうか。

古市さんのような発想が、社会全体に影響していて、経済の不活性を放置し、若者の活力を奪っているように思えてなりません。
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[徒然][貧困][少子高齢化][マスコミ]似非社会学者 古市憲寿の芸風

「安い牛丼や洋服が、日本型の福祉ですって?」http://alicewonder113.blog.fc2.com/blog-entry-40.html 「「ネット新時代は銀行不要」の現実味【2】 −対談:津田大介×古市憲寿×田原総一朗」 http://president.jp/articles/-/11364 【古市】なるほど、すき家はいいです

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古市氏の発言には、安い牛丼が日本型福祉である(そして、その福祉が多くの人を幸福にするよう意図されたものであり、なおかつ幸福にしている)とはどこにも書いてないと思いますが、独身の方が自殺率が低いというデータは初めて知ってちょっと面白かったです。

No title

>モノが安く提供されているということは、労働力が安価に提供されているということです。
物が高い=所得増っていうような示唆も間違いですよ。
この国の場合は多くの材料や燃料は輸入ですから大抵
価格転嫁された物=高い物って可能性が高いわけですから
労働者の給料に比例して反映される事はまずないでしょう。
物価上昇=所得増なんて掲げてるアベノミクスなんか嘘っぱちで
所詮無産階級に恩恵は一切ないんですよね。正にマジックです。
競争力があって利幅の大きい商材を扱っている業界だけが
物価上昇=所得増の恩恵を受けることが出来るんじゃないかと。
まぁ牛丼の価格と需要についてはアメリカの低所得層の主食が
マクドナルドのハンバーガーになっているのとほぼ同じ問題ですね。

自殺に関しては現在の統計上の数値を語るのはもはや意味のない事です。
計測対象が遺書があり自殺と分かる都合の良い物だけ統計化していますから。
多くの事故として処理されたケースを含むと指標上限三万人なんて即カンストです。

>経済の不活性を放置し、若者の活力を奪っているように思えてなりません。
牛丼を始めとした飲食業界やそれを推す人を非難する必要は一切ないですよ。
辛辣に非難すべきはこの国の国是であるシルバー民主主義ですから。
現在の政策方針が是正されない限りこの国の若人に未来はないでしょう。

自殺率と福祉

北欧との比較のなかで福祉をかっており、
文脈的に日本版福祉だといっているのであって、

自殺率の話ではない。
もし、自殺率と福祉が関係するのなら、北欧の若者の高い自殺率を比較して述べるべきだと思う。

Re: 自殺率と福祉

> 北欧との比較のなかで福祉をかっており、
> 文脈的に日本版福祉だといっているのであって、
>
> 自殺率の話ではない。
> もし、自殺率と福祉が関係するのなら、北欧の若者の高い自殺率を比較して述べるべきだと思う。

ななしさん
北欧の自殺率は日本よりずっと低いですよ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E3%81%AE%E8%87%AA%E6%AE%BA%E7%8E%87%E9%A0%86%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88

スウェーデンは1970年頃に日本より高い時期もありましたがその後どんどん減っています。
http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/2774.html
最近ではずっと差がついてしまっています。(日本12位、スウェーデン30位)

No title

低賃金だとすき屋やマクドでさえ手が出なくて、コンビニへ・スーパーへ・ドラッグストアへ足が向きます。あの手のファストフードの客は中流層。
さらに言うと低賃金にとってユニクロは高級ブランド。低賃金はディスカウントストアに置いてある服を買います。
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