安い牛丼や洋服が、日本型の福祉ですって?
その中で、古市憲寿氏の次の発言を見て、わたしはメガテンになりました。
【古市】なるほど、すき家はいいですよね。牛丼やファストフードのチェーンは、じつは日本型の福祉の1つだと思います。北欧は高い税金を払って学費無料や低料金の医療を実現しています。ただ、労働規制が強く最低賃金が高いから、中華のランチを2人で食べて1万円くらいかかっちゃう。一方、日本は北欧型の福祉社会ではないけれど、すごく安いランチや洋服があって、あまりお金をかけずに暮らしていけます。つまり日本では企業がサービスという形で福祉を実現しているともいえる。
え?
牛丼やファストフードのチェーンが、日本型福祉???
「すごく安いランチや洋服」が、日本型福祉ですと!??
モノが安く提供されているということは、労働力が安価に提供されているということです。牛丼、ファストフード、安価な洋服……そこで働く人々の賃金はどうなっていると思ってるんですかね。
低賃金で働く人たちは、おカネがないから、買うモノがどうしても少なくなる。
買わないんじゃないんです。
「買えない」のです。
ちなみにですがこれが、「需要不足」と言われるものです。
おカネがないから買えない=需要が生まれていない状態。
その結果、社会はどうなっていますか?
一つの見方として、自殺率を見て見ます。
人口10万人あたり、年間に何人が自殺しているか。
ここに、年齢層別の自殺率(男子)のグラフがあります。

(元URL:http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/2760.html)
抹茶っぽい色の線が、80歳以上の人の自殺率、いちばん下の方の、水色っぽい線が20~24歳の人の自殺率です。
80歳以上の人は、1945年頃まで自殺率は高かった。そこから一気に下降して、現在では他の年齢層と同じ率になっています。
20~24歳の人の自殺率は、バブルの最高潮、1992年頃に最も低くなっており、そこからどんどん上昇して、今では全年齢層の平均に達しようとしています。
※念のためですが、自殺率は人口10万人あたりの自殺数ですから、単純に自殺数を比べた場合には、見た目の印象は異なるグラフになります。
考えてみてください。牛丼、ファストフード、安価な洋服屋で低賃金で働く人はどんな人でしょうか?若者が多いのではないでしょうか。そして、非正規も多いでしょう。
このグラフを見れば、安価なモノやサービスが日本型福祉だなどと安易に言えないはずです。
80歳以上の人の自殺率は減少しています。
長寿化は大きく影響しているでしょう。基本的には、経済状況や健康状態に不安がなく、暮らしが安定すれば、自殺は減るのです。
高齢者は暮らしも比較的安定しています。現在の日本では再分配すればするほど、格差が拡がる状態になっています。さまざまな高齢者向けの施策により、高齢者世帯に多く配分されるようになっているのです。
なお、核家族化が進み、独居老人も増えましたが、それは自殺率に大きく影響していないのでしょう。むしろ、同居の方がストレスが高く、自殺しやすいことが考えられます。実際、昭和51~54年で、独居老人の自殺率に比べて、同居老人の自殺の方が1.6倍多いというデータがあります。
参考:核家族化推移グラフ
(元URL:http://d.hatena.ne.jp/Pada/20110824/1314188056)

このところ、自殺数が年間3万人を切ったということですが、こうしたグラフの傾向を見れば、人口に占める割合が多い高齢者層の自殺が減っているということは可能性として考えられます。
それだと、少し減ったとしてもちっとも安心できません。
経済的余力のある人数が多い高齢者が増えて自殺数の総数が減ったからといって、若者が十分にモノを買えない状況を放置していいのでしょうか。
古市さんのような発想が、社会全体に影響していて、経済の不活性を放置し、若者の活力を奪っているように思えてなりません。
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