来年4月の消費税増税に反対すべき理由「ケインズ的分析」
現政権は、2014年4月の消費税増税(5%から8%)について、今年の10月頃判断する、と伝えられています。
多くの人が、もうこの決定は変えられないだろう、と悲観的な見方をしています。
しかし、ギリギリまで反論をとなえていく必要があるでしょう。
どうしてこのタイミングでの消費税増税が最悪になるのか、内閣官房参与の浜田宏一さんのつぶやきをきっかけに、田中秀臣さんがブログエントリを書かれました。
[経済]浜田宏一先生の消費税問題についてのつぶやき
これを人にうまく説明できるように、もう少し自分のことばでかみくだいてみました。
◆◆◆
日本は不完全雇用状態にあります。働きたいのに職が見つからない人が、まだまだ多いのです。日本の状況で完全雇用というには、少なくとも失業率が3%台前半にならないと、そうとは言えません。アメリカの7%台と単純に比べては、状況を正しく把握できません。
「ケインズ的な分析」とはどういうことでしょうか。
「有効需要を減少させ、不完全雇用を増加させ」る。
この文章は何を言っているのでしょうか。
これは、人々が「先行きどうもお金のことが不安だから使わないでおこう」と考えている状態のことを説明しています。
この状態では、企業も投資を控えます。新規雇用もしないばかりか、生産を控え、コストカットを断行して、解雇すら行われるようになります。
こうなると世の中に十分に雇用が生まれなくなります。
そして企業は内部留保を貯め込むようになります。
(ところで、需要というのは最終消費者が物を買うことだけではなく、企業が設備投資することも含まれます。)
このネガティブスパイラルを転換する、最初のきっかけは、何かあるでしょうか?
二つのきっかけが考えられています。
(1)デフレであってもお金を使うよう、人々のマインドが変わるまで待つ
(2)国策によるインフレターゲットの設定
●世代変わるまで待つ?
たとえデフレでも人々がお金を使うような風潮になり、放っておいても金持ちが消費し、企業が投資するようになる。そもそもこれは非現実的ですが、もし実現するとしても、世代が変わるまで待たなければいけないかも知れません。
ここで、「金を使わない金持ち」「設備投資しない企業」だけを責めていても始まりません。経済成長を厭う人々も、デフレの継続に加担しています。
たとえば正社員で、そこそこ給料がもらえている人が「人間は贅沢してはいかん。経済成長などもう不要」と信じていたら、その人は一生考えを変えない可能性が高い。
何しろその人は、社会が経済成長しなくても何とか食っていけて、年金もそれなりにもらえるのですから。経済成長がないと職さえ得られない人のことについては「格差がいかん」とだけ言って、どうしたら具体的にそれを変えられるかも考えないで済ませてしまうのです。
もしくは、まったく非現実的な方法しか提案しない。非現実的だから実現しないのに、「世の中がわるい」としか考えない。こういう人は一生このままで、ネガティブマインドを変えることはないと思われます。
…ちょっと言い過ぎました。
サヨク頑固オヤジオバサンへのdisはともかく、一般的に人は、生活態度や価値観を変えることは極めて難しい。世代が変わるまで待たなければいけないというのはそういう意味です。
●人々の期待を変える
ネガティブスパイラルを転換するにはもう一つの方法があります。
国策として、インフレターゲットを設定することです。国が責任を持って、インフレ率を少しプラスに保つのです。国としてインフレ率が一定に保たれるように責任を持つと言明することは、人々のマインドを一気に変える効果があります。
先行き経済が良くなりそうだ、という予測によって、需要が増加します。
需要というのは最終消費者がモノを買うということだけでなく、企業の設備投資も含まれるので、設備投資が増えれば需要が増えることになります。
こういう風に、「予測が需要を増やしたり減らしたりする」ことを前提にした上で、これまでの日本の20年間のような状況を「需要(人々が物を買ったり、企業が設備投資する)が不足しているので景気が悪い」と分析すること、それが「ケインズ的分析」と呼ばれています。
こういう状態のときに増税すると、「増税で使えるお金が減るから、もっと節約しなければいけない」となって、人々が物を買わなくなる。つまり有効需要不足が一層厳しくなる。需要がないから、企業は投資をしなくなり、生産を絞るから雇用も減ってしまう。
永遠に増税するなと言っているわけではないのです。景気が十分に良くなった上で、その事実を確認してから増税するのは、話が別です。
5%から8%への消費税増税が予定されている2014年4月は、20年間も不況が続いてきたところに、ようやく人々の予測を変える政策が出て、ほんの1年3カ月です。
そんな短期間で、20年間のデフレスパイラルの脱却を判定できるものでしょうか?
わたしは大変不安です。
また就職先が減るでしょう。
わたしは来年3月までの有期雇用なので、その頃、もし雇用が減っていたら、と考えるとぞっとします。
別にそれでもいいというあなたは、正社員なんでしょうか?
どうか、世の中にあふれている失業者が、まずは働けるように、雇用が世の中に増えて、定着するように考えてください。
そして、あなたの知らないところにいる、ギリギリの暮らしをしている人々が、少しは良い食べ物を料理する余裕を持ったり、娯楽を楽しみ、暮らしを良くすることができるように、そして税金をおさめ、それが、ギリギリですら暮らせない人への支援に回るように、もっとも現実的な方策を理解し、どのような政権であってもその政策(リフレ政策)を実行していけるよう、考えていきましょう。
多くの人が、もうこの決定は変えられないだろう、と悲観的な見方をしています。
しかし、ギリギリまで反論をとなえていく必要があるでしょう。
どうしてこのタイミングでの消費税増税が最悪になるのか、内閣官房参与の浜田宏一さんのつぶやきをきっかけに、田中秀臣さんがブログエントリを書かれました。
[経済]浜田宏一先生の消費税問題についてのつぶやき
これを人にうまく説明できるように、もう少し自分のことばでかみくだいてみました。
◆◆◆
日本は不完全雇用状態にあります。働きたいのに職が見つからない人が、まだまだ多いのです。日本の状況で完全雇用というには、少なくとも失業率が3%台前半にならないと、そうとは言えません。アメリカの7%台と単純に比べては、状況を正しく把握できません。
浜田先生「不完全雇用の元ではケインズ的な分析が有効でしょう。」
田中先生「ケインズ的な分析によれば、増税は有効需要を減少させ、不完全雇用を増加させてしまいます。」
「ケインズ的な分析」とはどういうことでしょうか。
「有効需要を減少させ、不完全雇用を増加させ」る。
この文章は何を言っているのでしょうか。
これは、人々が「先行きどうもお金のことが不安だから使わないでおこう」と考えている状態のことを説明しています。
この状態では、企業も投資を控えます。新規雇用もしないばかりか、生産を控え、コストカットを断行して、解雇すら行われるようになります。
こうなると世の中に十分に雇用が生まれなくなります。
そして企業は内部留保を貯め込むようになります。
(ところで、需要というのは最終消費者が物を買うことだけではなく、企業が設備投資することも含まれます。)
このネガティブスパイラルを転換する、最初のきっかけは、何かあるでしょうか?
二つのきっかけが考えられています。
(1)デフレであってもお金を使うよう、人々のマインドが変わるまで待つ
(2)国策によるインフレターゲットの設定
●世代変わるまで待つ?
たとえデフレでも人々がお金を使うような風潮になり、放っておいても金持ちが消費し、企業が投資するようになる。そもそもこれは非現実的ですが、もし実現するとしても、世代が変わるまで待たなければいけないかも知れません。
ここで、「金を使わない金持ち」「設備投資しない企業」だけを責めていても始まりません。経済成長を厭う人々も、デフレの継続に加担しています。
たとえば正社員で、そこそこ給料がもらえている人が「人間は贅沢してはいかん。経済成長などもう不要」と信じていたら、その人は一生考えを変えない可能性が高い。
何しろその人は、社会が経済成長しなくても何とか食っていけて、年金もそれなりにもらえるのですから。経済成長がないと職さえ得られない人のことについては「格差がいかん」とだけ言って、どうしたら具体的にそれを変えられるかも考えないで済ませてしまうのです。
もしくは、まったく非現実的な方法しか提案しない。非現実的だから実現しないのに、「世の中がわるい」としか考えない。こういう人は一生このままで、ネガティブマインドを変えることはないと思われます。
…ちょっと言い過ぎました。
サヨク頑固オヤジオバサンへのdisはともかく、一般的に人は、生活態度や価値観を変えることは極めて難しい。世代が変わるまで待たなければいけないというのはそういう意味です。
●人々の期待を変える
ネガティブスパイラルを転換するにはもう一つの方法があります。
国策として、インフレターゲットを設定することです。国が責任を持って、インフレ率を少しプラスに保つのです。国としてインフレ率が一定に保たれるように責任を持つと言明することは、人々のマインドを一気に変える効果があります。
先行き経済が良くなりそうだ、という予測によって、需要が増加します。
需要というのは最終消費者がモノを買うということだけでなく、企業の設備投資も含まれるので、設備投資が増えれば需要が増えることになります。
こういう風に、「予測が需要を増やしたり減らしたりする」ことを前提にした上で、これまでの日本の20年間のような状況を「需要(人々が物を買ったり、企業が設備投資する)が不足しているので景気が悪い」と分析すること、それが「ケインズ的分析」と呼ばれています。
こういう状態のときに増税すると、「増税で使えるお金が減るから、もっと節約しなければいけない」となって、人々が物を買わなくなる。つまり有効需要不足が一層厳しくなる。需要がないから、企業は投資をしなくなり、生産を絞るから雇用も減ってしまう。
永遠に増税するなと言っているわけではないのです。景気が十分に良くなった上で、その事実を確認してから増税するのは、話が別です。
5%から8%への消費税増税が予定されている2014年4月は、20年間も不況が続いてきたところに、ようやく人々の予測を変える政策が出て、ほんの1年3カ月です。
そんな短期間で、20年間のデフレスパイラルの脱却を判定できるものでしょうか?
わたしは大変不安です。
また就職先が減るでしょう。
わたしは来年3月までの有期雇用なので、その頃、もし雇用が減っていたら、と考えるとぞっとします。
別にそれでもいいというあなたは、正社員なんでしょうか?
どうか、世の中にあふれている失業者が、まずは働けるように、雇用が世の中に増えて、定着するように考えてください。
そして、あなたの知らないところにいる、ギリギリの暮らしをしている人々が、少しは良い食べ物を料理する余裕を持ったり、娯楽を楽しみ、暮らしを良くすることができるように、そして税金をおさめ、それが、ギリギリですら暮らせない人への支援に回るように、もっとも現実的な方策を理解し、どのような政権であってもその政策(リフレ政策)を実行していけるよう、考えていきましょう。
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