カンザスのMMTブログ

最近気になるMMT(Modern Money Theory)なる経済学理論について、入門的な読み物があったので、訳してみました。
翻訳上の間違いがあったら教えてもらえるとありがたいです。

以下は全部で52節ある入門ブログの第2節です。MMTの背景となる基礎知識が書かれています。

元のサイト
MMP Blog 2: THE BASICS OF MACRO ACCOUNTING - New Economic PerspectivesNew Economic Perspectives

誰かの資産は誰かの負債

あらゆる金融資産には、それと同等の金融負債がある。これは会計学の基本原則である。預金は家庭の金融資産だが、同額の銀行の負債となっている。国債や社債は、家庭の資産だが、発行者の債務である。家庭は負債を抱えてもいる。学生ローンや、住宅ローンや、自動車ローンなど。これらは債権者(年金基金やヘッジファンド、保険会社といった様々な金融機関)の資産として保有されている。家庭の正味の財産は、すべての金融資産からすべての金融負債を差し引いたもので、それがプラスなら、財産はプラスである。

内部財産と外部財産

経済をセクター分けして考えてみよう。もっとも簡単に分けるなら、公共セクター(政府や自治体)と民間セクター(家庭と企業)となる。

民間で発行された金融資産と金融負債を考えるならば、金融資産の合計が金融負債の合計となる。つまり、民間についてだけ考えるならば、純金融財産はゼロとなるはずだ。これは民間セクターの内部にあるので、「内部的財産」とも言われる。民間セクターが金融財産をプラスにするには、「外部的財産」の存在が必要となる。つまり金融債権が別のセクターに存在しなければならない。ここでは簡単に民間セクターと公的セクターに分けているので、外部の金融財産とは、政府の負債の形をとることになる。民間セクターは政府通貨(硬貨や紙幣を含む)だけでなくあらゆる種類の政府債券(短期国債、長期国債)を金融資産として持っていて、それは純財産の一部となっている。

非金融的財産(実物資産)についてのメモ

ある人の金融資産は、必ず誰か他の人の金融負債である。総体的には、正味の金融財産はゼロと等しい。しかしながら、不動産においては、誰かの財産が他の人の負債であるということはない。つまり総体的に見ると、正味の財産は実物(非金融的)資産の価値と等しくなる。たとえば、あなたがローンで自動車を買ったとする。あなたの金融負債(自動車ローン)は、自動車ローン会社の金融資産で相殺される。それらは差し引いてゼロになるので、残るのは実物資産、つまり、自動車そのものの価値となる。われわれの今後の議論は、主に金融資産と負債に限られたものとなるが、実物資産が個人レベルにおいても総体的レベルにおいても正味財産の一部となることは、常に念頭に置いておかねばならない。全ての金融負債を全資産(実物と金融)から差し引いた後に、非金融(実物)資産が残る。これが、総体的な正味財産である。


民間セクターの金融財さんは公共セクターの負債

収入や支出のフローは蓄積してストックとなる。民間セクターが正味金融資産をある期間に蓄積するということは、その期間、支出が収入より少なかったということだ。つまり、貯蓄したということだ。公共セクターと民間セクターのみの単純なモデルでは、これらの金融資産は政府の負債(政府通貨や債券)である。これらの政府の債務は、つまり、政府が税収よりも多く支出しているから発生している。当該期間に、政府の支出のフローに対して税収フローが不足して、借金となっている状態だ。この借金は政府債務のストックとなり、当該期間の民間セクターの金融財産の累計と価値が同じになる。

こうした2セクターのみの単純な例においては、民間セクターの純金融資産は、政府の発行する負債とまったく合致するということを覚えてほしい。政府が、常に財政を均衡させる場合、つまり支出を完全に税収と一致させる場合、民間セクターの金融財産はゼロとなる。政府が継続的に予算を黒字にしている場合(支出が税収より少ない場合)民間セクターの正味財産はマイナスになる。つまり、民間セクターは公共セクターから借金している状態になる。

この2セクターモデルでは、公共セクターも民間セクターも共に黒字化することは不可能だ、というジレンマに思い至るだろう。そして、もし公共セクターが黒字となるならば、等式から考えて、民間セクターは赤字となる。公共セクターが未払いの負債を回収できるだけの黒字を得ようとするなら、民間セクターは同じ分の赤字を抱えることになり、正味金融財産はいずれゼロになる。

他国の負債は国の金融資産

次に上げる分類方法は、3セクター区分である。国内の民間セクター、国内の公共セクター、そして海外セクター(外国の政府、企業、家庭)である。このケースでは、国内の公共セクターが財政を均衡させて、一定期間における支出を税収と同じに維持していたとしても、国内の民間セクターが海外に対して債権を持つということができる。国内セクターの正味金融資産の蓄積は、海外の正味金融負債と一致する。要するに、現実的な話、、国内の民間セクターは国内の政府の負債と、海外の負債によって正味金融財産を貯めることができるのである。国内の民間セクターが、政府の負債(こちらは正味金融財産にプラスとなる)と海外へ債券を発行する(こちらは正味金融資産を減じる)ことを同時に行うことは可能である。後日セクター間のバランスについても議論したい。

セクター間会計の基礎は、ストックとフローの概念と関係している

3セクター区分での説明を続けよう。国内の民間セクター(家庭と企業)、国内の政府セクター(地方知自体や政府を含む)、そして海外セクター(家庭と企業と政府を含む)各セクターでは、一定の会計期間、ふつう一年だが、その期間に収入と支出が起こるものと考えられる。どのセクターにおいても、毎年収入と支出を均衡させる理由はない。収入よりも支出を少なくすると、その年は黒字となる。収入より支出を多くすると、その年は赤字となる。均衡予算とは、一年間の中で支出と収入が等しくなることである。

この議論から考えると、黒字予算とは貯蓄フローと同じことであり、それは金融資産の正味累計となる。同じ理由で、赤字予算は正味金融財産を減らす。赤字になっているセクターは、過去に黒字によって蓄積された金融資産を利用しているか、もしくは新たに赤字と同額の債券を発行する必要がある。一般的な言い方では、赤字の支払いを、資産を処分可能な銀行預金(負の貯金)と交換することによって支払うという。もしくは、処分可能な銀行預金を得ることで債券を発行している(「借りる」)。蓄積された資産がなくなって、赤字の予算を続けるならば、負債を毎年増やしていくしかない。一方、黒字予算を続けているセクターは、正味金融資産を増やしていく。この黒字は他の少なくとも一つのセクターからの金融債権という形になる。

実物資産に関するメモ2

もし、貯蓄でもって実物経済を購入すると、どうなるだろう?この場合、金融資産は単に他の誰かに渡る。たとえば、あなたが銀行に貯金し、あるとき実物に変えたいと思い、絵画や、クラシックカーや、切手や、不動産や、機械、あるいは企業を買うとする。金融資産を実物資産に変えたわけだ。しかし、売り手は反対の取引をして、金融資産を得る。ポイントは、民間セクターは、たとえ誰かの金融資産がある人のポケットから他の人のポケットに移動したとしても、全体としては黒字を保っていることだ。

まとめ:

あるセクターの赤字は他のセクターの黒字

これらをまとめると、あるセクターの赤字は、他のセクターの黒字を合計したものと同じになるということだ。ワイン・ゴドリーの先駆的な研究によって、われわれはこの原則をシンプルな等式によって述べることができる。

国内民間セクター残高+国内政府残高+海外の残高=0

たとえば、海外セクターが均衡予算であったとしよう。さらに、国内の民間セクターの収入が1000億ドルで、支出が900億ドルで、年間に100億ドルの黒字だとしようすると、恒等式によって、国内の政府セクターはその年、100億ドルの赤字となる。つまり、民間セクターはその年、100億ドルの金融財産を溜め、それは国内の政府セクターの100億ドルの負債によるということになる。

もう一つの例をみよう。海外セクターの支出が収入より少なく、200億ドルの黒字だったとしよう。同時に、国内の政府セクターがやはり収入より支出が少なく、100億ドルの黒字だったとしよう。会計の等式から考えれば、当該期間に、国内の民間セクターは、300億ドル分の赤字となるはずである。同時に、その正味金融財産は300億ドル減るはずである。一方、国内の政府セクターは金融財産を100億ドル増やし、海外セクターは200億ドル増やす。

一つのセクターが黒字にすれば、少なくとも一つ、または他のセクターすべてが赤字となるはずなのである。

すべてのセクターが、黒字となることは不可能なのだ。

それは、レイク・ウォビゴン町の人たちが、自分たちは全員平均以上だと思っているのと同じである。


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