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松尾匡『ケインズの逆襲、ハイエクの慧眼』感想

Synodosで2013年10月から連載していた記事(「小さな政府」という誤解:連載『リスク・責任・決定、そして自由!』)をまとめ、このほど出版された『ケインズの逆襲、ハイエクの慧眼』読了。国や自治体の社会保障政策や、「小さな政府か大きな政府か」といったテーマに興味のある人にお勧めしたい本である。以下、感想。

ケインズの逆襲、ハイエクの慧眼 (PHP新書)ケインズの逆襲、ハイエクの慧眼 (PHP新書)
(2014/11/15)
松尾 匡

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この本では、まず、1970年代までの国家主導型経済がなぜだめだったのかが描かれる。

70年代までの国家主導型経済が崩壊してからは、新自由主義も、そして新自由主義を批判する人までも、いまではいかに政府に「無駄遣い」させないかに注力しているのだが、この本ではそこの問題意識は、もっともだったとしている。現場を知りもせず、勝手な思い込みや、従来の慣習や利害関係だけで、まったく効果のない分野に金をつぎ込む政府では、飢餓で大勢を死なせたソ連のように、政府がいくら金を使ってもうまくいかなくなってしまう。

そうしたことが、ソ連の崩壊、ハイエク、フリードマン、ルーカスの予想、ゲーム理論、ベーシックインカム、不況下に有効なケインズ政策、スウェーデンのアクティベーションモデル、などなどを解説しながら、説得力をもって描かれている。

この本を読んであらためて思うに、国家の役割は、本来は、国民が最大限に力を発揮して働き、生産して消費して、一方、働けない人はしっかり支えられる、その大きな枠組みを提供するものであるはずだ。決して、民に任せて放置するものであるはずがない。

いま、新自由主義者も、それを批判する人も、同じように大きな政府を厭い、小さな政府・自助をめざしてしまっている。どちらも、不況時にも関わらず政府債務を過大に問題視し、とらわれている。だから再分配もうまくいかず、いくら財政再建をしようとしてもそれもいつまでたっても達成できない。この頸木から逃れるため、ケインズをもう一度現代に復活させよう、ハイエクの慧眼を見直そう、ということなのだ。

本の最後の方に、大きな政府VS.小さな政府の対立軸と、労働側VS.資本側の対立軸をもうけた図が出てきて、興味深く眺めた。このとき、右派も、左派も、ともに大きな政府を嫌い、右派は新自由主義へ、左派は新しい公共(第三の道)へと移動した。でもこれらはどちらも、労働者とは反対側で、小さな政府の面にある。

右派からも左派からも大きな政府が嫌われたのは、その恣意性・裁量的な性格だったのだとすれば、もう一つ、「裁量政府」VS.「基準政府」の軸をもうけてみればいい。
ということで3次元の図も描かれており、これも興味深かった。

これからは、胸先三寸の「裁量的政府」から、人々の予想を確定させる「基準政府」への転換が必要だ(そしてもちろん、左派ならば、労働側であり、大きな政府という選択が示唆されている)。

社会保障や、政府の役割、所得や富の再分配などを論じる際に、まず基礎知識として読んでおきたい本である。

で、あとがきに、おまけのように、政党のサンプルみたいのが書かれていて、「自由ライダー党」「人民戦線・党レッド」「ウルトラの党」の三つのマニフェストサンプルが書かれているのが松尾先生らしいというか。もちろん先生の一押しは「人民戦線・党レッド」なのだが……わたしとしては電通にこのコンセプトのプロモートを依頼したら、どういう党名にするのか見てみたい。
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Author:アリス
資本主義の国のアリス

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最近ケインジアン。

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