派遣法改正案について朝日社説がまとも

hamachan先生が、「本日の朝日社説on派遣がまともすぎる」と感動していらっしゃるので何事かと思って見に行ったら本当にまっとうだった。

ちまたには、何も調べもせず、一見よくわからない派遣の実態がなぜそうなっているのかよく考えもせずに、気分で唱える改正反対論があふれているが、そこにあまりにもまっとうな朝日社説。10月31日付。

派遣法審議―目指すべきは均等待遇

労働者派遣法改正案の国会審議が始まった。

 派遣社員は、派遣会社と雇用契約を結んで、派遣先企業で働いている。派遣先で仕事がなくなると派遣会社から解雇されたり、賃金を安くされたりする問題がある。このため、派遣労働が広がらないよう、派遣先が派遣社員を受け入れる期間は上限3年に規制されている。ただし、専門的だとされる26業務では期間の制限はない。

 この「業務」による規制がわかりにくいという主張が、派遣業界や経済界に強かった。派遣労働者にとっても、上限を業務で決めると、例えば前任者が2年をこなすと、後任の派遣社員が1年しか働けない事態が起きてしまう。

 改正案は、業務による規制を見直し、派遣会社と派遣社員の間の契約期間によって区別することにした。期間を決められている有期雇用派遣と、定年まで働ける無期雇用派遣だ。同じ派遣先で働ける期間は、前者が上限3年、後者は無制限となる。

 派遣会社が無期雇用派遣を増やせば、派遣社員から見ると、解雇の不安は緩和される一方で、働き方が派遣というスタイルに固定される恐れもある。有期雇用派遣の場合は、3年ごとに派遣社員を代えれば良く、業務自体が派遣に固定化されてしまう可能性が残る。国会での論議も、この見方を巡って賛否が割れている。

 しかし、目指すべき方向ははっきりしている。同じ価値のある仕事をしている人には同じ待遇を義務づける「均等待遇原則」を導入することだ。

 この原則があれば、派遣会社に支払うマージンが必要な派遣労働は直接雇用よりも割高になり、コスト目的で派遣労働を使うことへの歯止めにもなる。

 改正案のとりまとめ過程で均等待遇原則の導入が提案されたが、経営者側の反対で見送られた経緯がある。確かに、いきなり賃金の均等待遇を実現させるには、無理もあるだろう。しかし、交通費などの手当や福利厚生面で待遇に違いがある。まず、そんな扱いをやめて、原則の実現を目標にするべきだ。

 改正案には、これまで一部の派遣会社に認められていた届け出制をやめ、全てを許可制にすることも盛り込まれた。条件を満たせば届け出だけですんだことが、不適切な業者がはびこる一因になっていたからだ。

 改正案に盛り込まれた改善の流れを太くするためにも、派遣労働者の所得が向上する道筋をつけること。その責任が、この国会にはある。

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好況になってから増税を、そして中間層にも分配を(子育て、教育、雇用対策)

私は「No More増税」という主張を絶対にしない。好況になれば増税すべきと考えているからだ。

その際、消費税か、相続税か、所得税か、その他か、そのバランスはどうするか、という話になる。専門家に議論してもらうしかないが、とりあえずの感想として中間所得層から上に対してもっと課税するようにすべきだという感触を持っている。そういう考え方だとやはり累進性が効くものが良いので、ぱっと考えつくのは所得税だ。日本の所得税は、中間層(だいたい年収400万~500万ぐらい)から上に対して課税率が低いという調査がある。社会保険料が高いからその分所得税が安くなっているという意見もあるが、そうでもなくて、社会保険料を含めて考えても、他の先進国より低いそうなのである。
【参考】
KYの雑記ログ「再分配のための基礎的指標 「格差の指標」の読み方」
太田清 「日本の所得再分配―国際比較でみたその特徴」 ESRI Discussion Paper Series No.171 2006年12月

国の社会保障機能を強化していくにあたっては、「貧しい」人々、「可哀想な」人々にだけ注目するのではなく、中間所得層に対しても、子育て費用や教育費などによって、十分に恩恵を感じられるほどに分配していくのが良い。

もう一つ強化してほしいのは失業保険を含む雇用対策である。

今のように技術革新が速く、10年先の事業の継続すら確信が持てないような状況では、雇用が流動化せざるを得ない。現在日本型年功序列がゆらいでいるが、技術革新の状況を見ても、結局流動化は覚悟せざるを得ない。たとえいま正社員で安定しているように見える人でも、事業の入れ替わりが速い時代に、年功序列がゆらぎ、結果としてジョブ型採用が進展していくならば、事業がなくなれば解雇が行なわれる。だから、若者だけでなく、中高年への失業保険を含む雇用対策を国が積極的に行っていかないと、社会がうまく回らなってしまう。

それに、昔よりも長く健康に生きる人が大幅に増えたのだから、できるだけ多くの人が長く働いて、長く税や社会保険料をおさめることが重要だ。長く働ける方が幸福感が高い人も多いだろう。たとえば40代で失職しても、その後も30年働く時代になってきている。それだけの期間働くならば、キャリアの再構築も十分意識されてくる。中高年だから物事を新しく覚えられないなどということはない。頭が固くなっているところもあるが、中高年がキャリアを再構築する時代だという認識になれば、その程度のやりにくさは乗り越えていけるだろう。そうしたキャリア再構築にあたっては国が失業時期の生活費の保障や、再教育の支援をしていくのが良いと思う。

ただし念を押すが、不況の時に増税してはいけない。不況の時には、「財政再建」自体、後回しにすべきだ。
以下の説明がわかりやすい。

財政再建とは歳入を増やし(増税)、歳出を減らす(財政緊縮)ことです。その影響を見るために、需要とはどのようなものかをみてみましょう。
経済全体の需要は、概ね大きく次のように構成されています。

 需要=①民間消費+②民間設備投資+③政府消費・投資+④純輸出

消費税増税は家計の予算に制約を与えるため、①を減少させ、財政再建は、政府支出を削減するため、③を減少させます。・・・以下略

出典:Turedure Keizai:財出27 新著『日本国債のパラドックス‥‥学』Ver.1)



不況の時に財政再建をやれば、すべてがどんどん縮小してしまう。社会保障費までも。不況の時はむしろ国が財政出動すべきである。別に役人が頭を絞って予算の割り振りを考えずとも、現金のバラマキでもいい。国が主導して需要を創出しなければならない。その辺の仕組みはこちらのページに書いてあることがわかりやすい。

Turedure Keizai: New Economic Thinking2 資金循環とワルラス法則を基盤とする新たな体系

社会保障強化のためだといって、不況時に増税を叫び、イソップ寓話の北風のように人々の消費意欲と成長意欲をそいでますます国の財政を縮小させてしまう左派ではなく、金融緩和を含むリフレ政策を押し進め、雇用の場がうまれる土壌をつくり、より大きな国家財政と、より良い公共サービスをめざす新しい左派の登場が待ち望まれている。

悩みは深まる

10月4日のエントリ「左派リフレ派の悩み」では、既存のリフレ派とは違う潮流をつくりたい、という趣旨のことを書いた。つまりそれは端的に言って、リフレ派であっても“チャンネル桜で動画配信したり、「中国人ガー、韓国人ガー」といったりする連中を認める”ようなことのない人々の集まりが欲しいのである。

こういうことを言うと「そんな風にイデオロギーで分裂するから一まとまりの勢力になれず、目的が達成できないのだ」と言われそうだが、わたしの感覚では「そろそろもう分かれた方が、そっち方面の人々(人種差別反対、ヘイトスピーチ反対、格差拡大反対、弱者への社会保障強化賛成といったところの優先順位が高い)にも理解を広げる可能性を増やすことができる。

改めて言えば、「リフレ」はあくまでも、格差の少ない社会、社会保障がしっかりしている社会をつくるための手段であって、目的ではない。

目的は、より積極的な再分配であり、社会保障の強化なのだ。

リフレがなければそれができないのか、と言われると、私の考えではそれは極めてやりにくい。パイが小さいままで奪い合うのと、近々大きくなるという見込みと期待のもとで、その増える部分を分配していくのとではやりやすさが違う。

それに、財政緊縮で締め上げられている欧州で、自殺が増え、極右が台頭してきているのを見ると、リフレは手段で目的ではないから後で考えればいい、とは、とても思えない。手段の中でも最速で手をつけるべき部分である。

そんな風に思っているところに、hamachan先生の「リフレ派は間違っても社会政策に意見するな@甲山太郎&熊沢透」というエントリを見た。

リンクをたどって「hahnela03の日記/あけましておめでとうございます。」を読むと、リフレ派が意見をしてはいけない社会政策というものの中に、増税に絡む政策があげられていた。

それにしても、東日本大震災復興予算を批判したり、瓦礫処理を妨害して、復旧・復興の妨害に勤しむ方達の言動には大変心痛める次第ではありますが、年末年始にかけても、1兆円のファイナンシャルリース(これを批判すると地方鉄道の上下分離方式も自動的に批判しているってことには頭が回らないらしい。)や復興増税(前回の消費税増税時の法人税・所得税減税の是正を含めた、震災復興予算の回収)、消費税(社会保障及び間接税・関税全般の改正)に批判的な言動をみまして、震災の復旧・復興及び日本経済の混迷からの脱却の困難さに恐れおののいております。


前半の「東日本大震災復興予算を批判」「瓦礫処理を妨害」「1兆円のファイナンシャルリース」についてはわからないのでコメントしないが、復興増税と所得税増税に関しては、リフレ派が批判しないわけがない。

なぜなら増税は財政緊縮であり、人々の消費を減らし、需要を減少させ、企業の設備投資、そして雇用を減らし、給料を減らし、デフレへと向かわせるものだからである。

英国がリーマンショック後に金融緩和したのに経済成長が遅れたのは、増税などの財政健全化政策も同時に行ったからだ。

財政緊縮は、景気が良い時に行なうべきものであり、デフレ時に行なうべきものではない、というのがリフレの考え方の基本にある。リフレ派は過度のインフレも好まないので(だからリフレというが)、景気が過熱すれば引き締めるべきという考え方をしている。

上の引用部分に書かれている(前回の消費税増税時の法人税・所得税減税の是正を含めた、震災復興予算の回収)(社会保障及び間接税・関税全般の改正)についても同様で、私はこうした是正に大いに賛成だが、それは景気が回復してからやるべきだと考えている。デフレ時にはそうしたことは先延ばしにして、国の債務を増やしてでも国が金を出していくべきだ。

いずれはスウェーデンなみとまでいかないまでも、相当の割合で税金を取って国が行なう公共サービスを、手続きや執行状況の透明性を高め、監視や議論など市民による関与を強めながら、増やしていくべきだと考えているので、早く景気を回復して、増税へとつなげてほしい。

そのためにも、デフレからまだ脱却できていない内の拙速な増税はなんとしても避けるべきなのだ。

もう一つ、hamachan先生に指摘されて難しいなと思ったことは、リフレ派であってもいまひとつ人種差別がらみの知識だとか、労働規制に関するワキが甘かったりする人々に関してどう考えるかということだ。リフレ以外のところで考えていることや、価値観などで、対立する場合、リフレに関する知識の引用も憚られるだろうか。

一方では全然アウトな感じの人々がいて、そういう人だとツイートのRTも、ブログの引用もする気が起きない。そもそも発言を見に行かない。しかし、高橋洋一氏とか田中秀臣氏とか村上尚紀氏あたりの発信は、リフレに関してはぜひ他の人にもこの情報を広めたいという場面が多い(田中秀臣氏に関しては社会保障に関しても見識があり良い意見をお持ちだと思うのですが…チャンネル桜は止めたと聞いたし…ただ朝日新聞の従軍慰安婦強制連行誤報絡みで、朝日新聞をやたら嘲笑する感じなどはあまり好きではなかったり※消し線部分下記参照)。

<注※>田中氏からこの点について誤りであるとのご指摘を受けました。勘違いがありお詫びいたします。氏の見解についてはご自身のブログが正確だと思いますので、こちらをご参照ください。
[話題]ネットでよくある“誤読”の一例(朝日新聞慰安婦問題関連)
<注おわり>

ではあなたはどこでケジメをつけているのですか、何があなたの基準なのですか、と言われても、その辺はいわく説明しがたい。

願わくば早く左派にもリフレの理解が浸透して、別にそういう境目の人たちの力を借りなくても大いにリフレを主張できるようになりたいものです。

消費税増税を延期せよ

本日付で日経が次の記事を掲載している。(登録すれば月10本まで無料で読めます※登録無料)

日本経済新聞 「消費税、予定通り10%」が6割 有識者アンケート

(抜粋)
政府が昨年夏に8%への消費増税について意見を聞いた有識者の6割が、来年10月に予定する消費税率10%への引き上げに賛成であることが4日分かった。


昨年夏、消費税を5%から8%に引き上げる際に、引き上げが妥当かどうか、政府は会議を開いて有識者に問うた。その時の賛成、反対の一覧表はこちら
yushikisha.jpg(図)

日経はこれらの人々(60人)にこのたびアンケートを送り、うち43人から回答を得、そのうち26人が、予定通り10%への増税に賛成と回答したという。

ということは、アンケートを送ったうち4割ぐらいしか賛成してないわけだが、日経記事のタイトルは「6割」とうたっていて明らかにミスリード。

それはおいておいても、賛成理由がまたひどい。

賛成理由(複数回答)としては「社会保障の安定と充実のために必要」が69.2%で最も多く、「財政再建を急ぐ必要がある」と「増税をやめると市場が不安定になるリスクがある」が各53.8%で続いた。全国銀行協会の平野信行会長は「引き上げ延期は金融市場に悪影響を与える懸念がある」と指摘した。


デフレから脱却できていないのに、増税すれば、結局税収が下がり、社会保障充実も財政再建も遠のくというごく常識的なことが、この「ユウシキシャ」の方々にはわからないのだろうか。

今年4月に消費税を5%から8%に増税した結果、景気は惨憺たる状態になっている。
景気の落ち込みについては多くの報道が見られる。

ロイター 鉱工業生産8月は予想下回る‐1.5%、出荷弱く減産追い付かず(2014年 09月 30日)

ロイター 8月全世帯の実質消費支出は前年比-4.7%、5カ月連続減=総務省(2014年 09月 30日)

YOMIURI ONLINE 増税影響、非製造業の景況感悪化…日銀短観9月(2014年10月01日)

問題なのは、内需だ。日本はGDPの8割以上を内需に依存する。その源泉である個人の景況感も、下の図に見られるように、どんどん落ち込んで来ている。

seikatsuishiki.jpg
(図表1)景況感〔Q1、3、4〕より
出典:日本銀行 「生活意識に関するアンケート調査」(第59回)の結果 ―― 2014年9月調査 ――(10月2日)

このまま落ち込んで戻らなかったら、税収の落ち込みによって、今年4月に消費税を3%増税した分まで消し飛んでしまうだろう。

この落ち込みを、去年8月に増税に賛成した有識者の多くは予想できなかった。それなのに、政府は同じ面々にまた意見を聞こうというのか。ちなみに上の一覧を見ると去年賛成した人の中に社会学者古市氏が入っておりますね。さすがですね。デフレ企業万歳。

私は何も、永遠に増税するなと言っているわけではない。それどころか北欧型の高福祉国家になって欲しいわけだから、いずれは税金と社会保険料をもっととって、再分配強化を実現してほしい。

しかし、デフレのままではそれはうまく行かない。デフレで増税したら余計消費が落ち込む。それは雇用の減少、貧困層のさらなる創出と固定化を進める。そしてすでに正社員になって収入が安定している人は、そのままでいれば貨幣の価値が上がっていき生活はますます安泰なので、再分配強化などにはまったく関心を示さないだろう。

再分配強化するためには、経済が少しインフレになっている必要があるのだ。もちろんそれは、実質でだ。インフレが定着してから増税するべきなのだ。そうでなければ、社会保障強化もされず、財政再建もできなくなる。

したがって、ユウシキシャたちが来年の10%への消費税増税を「社会保障の安定と充実のために必要」「財政再建を急ぐ必要がある」と言っているのはまったく矛盾している。

その上「市場が混乱する」というのは何がどうなるのかさっぱりわからない。「債権市場の信頼を失い、金利上昇に見舞われる」といった懸念があるようだが、それに対してはフィナンシャルタイムズの次の評価が参考になるだろう。

フィナンシャル・タイムズ紙の別の記事では、日本は元々構造的に債券の需要が供給を圧倒しており、世界で唯一、債券利回りの下落が続いていると指摘。自信が強まって余剰資金がリスク資産や実体経済活動に回されない限り、債券利回りは上がらない。同紙は、債券市場崩壊というシナリオを、災害映画に類する「アベゲドン」と呼んでいる。
アベノミクス最初のエラー 消費税増税に海外紙から厳しい声 2013年10月1日)



さらにノーベル経済学賞受賞者でありアメリカのリベラルとして著名なポール・クルーグマンもこのように警告している。
日本経済は消費税10%で完全に終わります」

約束通り、景気条項に従い、10%への消費税増税を延期することが、社会保障の充実と財政健全化のためにどうしても必要である。

無知なユウシキシャとバカなマスコミに振り回されてはならない。

ユウシキシャでない一般の人々はわかっている。世論調査の方が、正しく状況を判断している。
東京新聞 消費税再増税反対72% 「12月の判断先送りを」


左派リフレ派の悩み

私は左派であり、かつリフレ政策賛成派である。

長年デフレ状態にあった日本の金融政策を変えたのは第二次安倍政権だった。

私は自民党は支持していないし、安倍のネトウヨ的な部分も大嫌いである。しかし、いまの日本で、経済政策さえしっかりしていれば、誰もわざわざ戦争を志向しないだろうし、世界から情報が入ってくるのだから民族主義バカも一定程度いてもそれ以上増えなくて、影響は限定されると思っていた。

先にリフレが定着すれば、再分配の原資もできる。その上で再分配を強力にとなえる左派政党が、10年以内に影響力を持つようになれば、日本は北欧的な高福祉国家に向かえる、と期待してきた。

しかし昨今の状況を見ると、そう呑気に構えてもいられなくなってきたように思う。

安倍のイメージが悪すぎて、左派的な人たちが金融緩和政策までいっしょくたに否定してしまうのである。

安倍が経済成長にまい進するのは、中国に勝ちたいためであり、日本が世界に対し優位になり、高度経済成長をトレモロしたいためであり、他国民と自国民の貧しい人々を搾取して、自分と金持ちだけをさらに富ませるためである、というのが、左派的な人たちのアベノミクスのイメージだ。

結局アベノミクスを否定し、金融緩和を否定し、雇用創出効果を無視し、一方で「国家財政破綻」という、ノストラダムスの大予言を信奉し、財政再建路線に走る。財政を緊縮し、消費税増税し、結果的に税収が少なくなってしまいには再分配も縮小せざるを得なくなるのだ。

それこそが日本を破滅に向かわせる。

破滅といっても、別に隕石が落ちてすべてが破壊されて人々が路頭に迷うとかいうアクション映画的な話ではない。

若者の自殺率が上昇を続け、中間層が解体し貧困層が固定化し、貧困層への教育が不足し、ネトウヨが増え続け、より一層ひどい極右政権が台頭する、という程度のものである。

…「という程度」…

ま、社会保障がらみの会議でしばしば委員を勤める橘木先生なら、成熟した社会というのはそういうものです、と一蹴する程度ですよ。
参考:アベノミクス、立場異なる識者2人の評価:朝日新聞デジタル

社会学者古市先生なら、牛丼を食べて、ユニクロを着れば、十分に生きていけるじゃない、とおっしゃるでしょう。
参考:「ネット新時代は銀行不要」の現実味【2】 -対談:津田大介×古市憲寿×田原総一朗


さて私はこんな社会を見たくはない。

どうなればいいのだろうか?

差別が嫌で、別に中国に勝ちたいとも思っておらず、従軍慰安婦問題は真摯に受け止めるべきと思っていて、生活保障を含む貧困層への再分配や、失業者への支援策をもっと積極的にやろうと思っている左派の人々が、金融緩和政策に理解を示し、経済成長・雇用創出に積極的になればいちばん良い。

でも「アベノミクスのうち金融緩和だけはまともなんだ、それは否定したらいけない」といっても、そういう左派の人たちは聞く耳持たない。

だったら、リフレ政策、金融緩和を支持する意見の人が、安倍政権をきっちり批判し、在特会を支持したりチャンネル桜で動画配信したり、従軍慰安婦問題における日本政府の役割を軽視しようとする勢力とは訣別する姿勢を持てばどうだろうか。

いままで、リフレ左派的な人はいたが、是々非々ということで、チャンネル桜で動画配信したり、「中国人ガー、韓国人ガー」といったりする連中を認めるような傾向がある。

もちろん、非常に説得力のある経済学の見識を、必要時に取り上げるのは良いが、ふだんからなぁなぁな感じになってしまうのがまずいだろう。

私は次のような立場を取る左派の勢力が育って欲しい。

  • 差別に反対
  • 格差拡大に反対
  • 低所得者に対する所得再分配を政府がもっと積極的に行なうべき
  • 教育・医療は国が公共サービスとして相当程度提供すべき
  • すべての労働者が「健康で文化的な生活」を送れるよう制度を構築するべき
  • 失業者に積極的な再就職支援を行なうべき
  • 2~3%程度のマイルドなインフレを保ち、雇用を縮小させないようにすべき
  • 政府は金融政策のマクロ経済への影響について正しい理解を持ち、マクロ経済に介入すべき
  • したがって政府はある程度大きくあるべき
  • デフレ時には財政健全化を後回しし、金融緩和し、増税も後回しにする
  • 経済成長が軌道に乗ったら増税し、北欧的な高福祉国家をめざす

アベノミクスを「金融緩和」だけであっても許せない左派の人が多いなら、私はアベノミクスの部分的支持の表明は取り下げようと思う。アベノミクスを全否定し、新たなリフレ分派(○○リフレ派)を名乗りたい。

既存のリフレ派にとってはバカバカしいと思えるだろうが……

今悩んでいるのは、○○にどういう文言を入れたらいいか、ということである。このエントリのタイトルのように、「左派リフレ派」でいいのかどうか?


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アリス

Author:アリス
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