生活の党 中村てつじ氏による『財務省の罠』講演まとめ
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2013年04月12日プレゼン『財務省の罠』最終版.pdf
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2013年4月12日『財務省の罠』講演.MP3
日本はデフォルト(債務不履行)になりません。国債が返せない、ということになりません。自国通貨が発行できる国で、国債が暴落した場合、つまり、金利が上昇した場合、中央銀行が国債を買い入れることができる。すると国債の需要が増える。需要が増えれば価格が上がる。金利が下がる。
ギリシアの場合、ギリシアの国債を売ってユーロにすると、それでドイツの国債が買えてしまう。すると、ギリシアの国債の金利が上がり、価値は下がる。ドイツの国債の金利は下がって価値は上がる。だからギリシアが破綻する可能性が出てくる。
心配性の人「財政の信用がなければ国債は売られる、すると金利が上がる」
→国債を売って得た通貨で何を買かを考えてみる。景気が良ければ、不動産、株社債などが買われる。景気が悪かったら、これらを買っても将来の価格上昇が見込めないので、通貨のままで持っていたいのでむしろ国債を持つ。
通貨の形にもっとも近くて金利がつくものは国債。つまり景気が悪かったら国債が買われる。国債の金利は経済状況を反映するに過ぎない。
心配性の人「いや、国債を売って得た金でドルを買って海外投資すればどうなる?資本が対外的に逃げていくよ」
→円を売ってドルを買う人がいたら、ドルを売って円を買った人もいる、ということである。円を買ったら、円で買えるものを買う。通貨に金利はつかないので、国債を買う可能性が高い。
結局、景気が良くなって、他の金融商品が選ばれる状況にならない限り、国債の金利は上がらない。国債だけが単独でただ暴落するような状況はないということ。経済状況に連動して金利が変わるのが、自国通貨建ての国債。
心配性の人「でも日本はGDPの2倍も国の借金がありますよ!」→デフォルトする国はどんな国か。「国」とは、実は「政府」ではない。国の借金が1千兆円、というとき、この時の「国」は「政府」のことを言っている。「国の経済主体」は4つ。政府、金融機関、(非営利を含む)企業等、家計。
他の国に借金があれば、取り立てに合うということはある。しかし日本は、対外純資産は21年連続世界一。つまり、世界中に金を貸している。金を貸している方が借りている方から取り立てに合うことはない。政府の債務額そのものと、償還能力とは関係がない。(償還能力があれば問題がない。)
破綻している国とはどういう国か?外国通貨建てで国債を発行している国。自国の通貨で国債を買ってもらえないような国。日露戦争の時、日本が勝った原因の一つが、他国から金を借りて戦費を調達できたことがあるが、この頃は円が弱かったから、ドルやポンド建てで国債を発行した。
自国通貨が弱い国とは何かというと、対外純負債国である。他の国から金を借りている国。借りている金を引き上げられてしまうと、自国通貨が簡単に弱くなってしまう。他の国の人たちは怖がって買わなくなるので、他国通貨で発行せざるを得なくなる。
破綻の可能性がある国は、経常収支が赤字の国。貿易収支、経常収支が赤字。他国から金を貸してもらってようやく貿易収支の赤字をファイナンスできるような国。日本はまったく逆で、毎年膨大な経常収支の黒字がある。
最近赤字になっているが、エネルギー要因がある。それでも経常収支は黒字。所得収支で、過去の黒字のリターン(配当)が毎月1兆円、毎年12兆円ぐらい。貿易収支の多少の赤字は相殺される。そういう国である。
イギリスとアメリカは、例外的で、他国から金を借りている、つまり経常収支は赤字の国。貿易も赤字。しかし国債を自国通貨で発行できている。なぜなら経済的に強いから。金融立国で、他国からたくさん投資してもらって、その金を他国に投資して配当を得ている。
他国から金を借りて投資をすることで、所得収支が出て、国の収支はプラスになる。
そういう国の通貨で国債が発行されている場合、他国の人もその国債を買う。それを考えると、日本が破綻するぐらいだったら、先に対外債務超過のイギリスやアメリカが破綻するはずだが、その兆候は見えていない。
輸出力が弱くなり、日本の商品が海外で買われなくなる、通貨が弱くなる、そういう風にならない限り日本は破綻しない。経常収支が赤字になることすら、今後10年かかっても考えられない。(悪い状態が続いて)日本の製品が買われなくなるには何十年もかかるのではないか。そうなったとしても、他国に金を膨大に貸しているので、負債国になるまでにも何十年もかかる。
「次元の違う金融緩和」というけど、金融緩和とはそもそも何か。新聞などでは、「ジャブジャブ金を刷っている」みたいな書かれ方をしているが、実際のところ、どういうメカニズムで、株価や国債の価格に影響しているのか、という説明をあまり見ない。
「政策目標をマネタリーベースにした」というのは本当のところどういうことなのか。こういうことをわからないと、黒田総裁が何を言っているのかも理解できないはずである。
通貨とは、決済手段である。現金と預金。財布に入れていて、ラーメンを食べて払う金、これが現金。クレジットカードでネット通販で買い物した時に払う金、これは預金から払う。現金と預金は、生活上、同じ機能を果たしている。これらを合わせたものが通貨と呼ばれて、決済の手段、ということである。
4つの経済主体で言うと、企業と家計が持っている通貨を合わせてマネーストックというが、このマネーストックが増えないと、景気は良くならない。民間人がお金を持って使わないと景気が良くならない。
今はそれが少ないから経済が回っていない。マネーストックを増やすための必要条件の一つがマネタリーベース。
日本銀行が提供している通貨(+政府が発行する貨幣(コイン)はマネタリーベースの一部。マネタリーベースにはもう一つ、日本銀行当座預金がある。
日銀当預とは何か。普通の市中の銀行は、自分たち銀行の決済をどっかでやらないといけない。これを日銀当預の振替で行う。中村てつじがりそな銀行から田中さんの三菱東京UFJの口座に1万円振り込むとどうなるか。中村のりそなの数字が1万減って、田中さんの口座の数字が1万増えるだけ。情報が変わるだけで、りそなの金そのものは減らない。
銀行システムというものがあって、毎日、すべての銀行間の振込を集計して、その分を日銀当預の各銀行の口座に反映する。その集計結果と、各銀行が持っている現金、これの合計が、銀行にとっての通貨である。
では日本銀行ができることとは何か?マネタリーベースを増やすということは、この日銀当預を増やすということ。銀行同士の決済に使われるお金の量を増やしているだけ。つまり、銀行にお金を渡すまでしかできない。民間の人たちが金を使えるためには、銀行から民間にお金が渡らないといけない。
銀行から民間に金が渡されると、マネーストックが増える。これを進めるには別の仕組みが必要。銀行から金を出す方法は2つある。一つは融資。もう一つは国債の発行、国債発行によって得たお金を政府が民間に渡すこと(政府支出を増やす)。
銀行が融資をするとはどういうことか?日銀当座預金の残高がないと貸せないということではない。だいたい1万倍ぐらいまでは貸せることが法律で決まっている。法定準備率という考え方。預金された金額は、すぐには引き出されないなどの理由。信用創造。
マネタリーベースをいくら増やしても、融資が行われなければ民間のマネーストックが増えない。銀行にとって預金は負債。それを基にして簡単に貸してしまって、取り立てがもしもできなかったら、預金者が金を引き上げた時に自分が債務を返せないという状態になる。だから銀行は、景気が悪い時に簡単にお金を貸さない。
銀行にとって金利が自分の売り上げとなる。金利をつけて返してもらうから、リスクマネーを貸せる。今のように景気が悪いと、自らリスクを取って貸すことができない。売り上げが少ない中で簡単に貸して、返してもらえなかったら、損を全部自分で被ることになる。
「資金循環統計」のグラフを見ると、赤い線(家計資産超過)と、青い線(政府資産超過)の間隔がしだいに狭まっているので、家計が国債を買い支えられなくなっている、というのを、最近政府が言っている。しかし紫の線が重要。赤と紫を合わせると、民間資産はどんどん増えている。この差額はどこに行っているかというと、海外への投資となっている。

それはなぜかというと、一番下(緑)の線は、企業の負債と資産の差額。企業がお金を借りないと民間の資産は増えないはずだが、バブル崩壊後、平成4年ぐらいからこの20年間、上向きになっている。企業はどんどんお金を返して、貯蓄主体になっていた。金を返しているので預金の額は減るはず。だからこういうグラフになっているということは、預金の量が減っているはず。しかし、民間が持っている預金の量は右肩上がりで上がっている。企業がお金を返しているはずなので、その期間は右肩下がりにならなければいけないはずなのに、こういう図になっている。なぜなら、預金が増えるルートは、融資だけではなく、国債の発行と財政拡張によって、民間の預金の量を増やしてきたということ。
つまり、このようなデフレで、企業がどんどん借金を返している時に、もし、国債を発行していなかったら、民間が持っているお金の量はもっと減ってもっとデフレになっていただろう。国が借金しなかったら、通貨がもっと高くなり、若者の仕事はもっと減っていた可能性が高い。
たとえば1兆円の国債を発行するとき、どういうメカニズムで民間の預金が増えるのか。民間銀行の持っている日銀当座預金の1兆円が、政府の口座に入る。民間銀行のバランスシート上、1兆円が国債に替わる。政府が1兆円の支出をする。たとえば田中さん相手に公共事業で1億円を振り込む。日銀の政府口座から、田中さんの三菱東京UFJ銀行の日銀当座預金口座に1億円が入る。結局、民間銀行から見ると、1兆円が戻ってくる。
銀行の方は、1兆円は預金なので、負債となって、バランスシート上はバランスする。政府は1兆円の国債の負債が増えた。民間は、1兆円の預金が増えた。これがマネーストックが増えたということ。企業がお金がなくて負債を返している時に、こういったことをしなければ、もっと国民の生活は苦しくなっていたはず。
「しかし政府はどこまでもお金を発行できるんですか、それはおかしい」
→それはその通り。民間がお金をたくさん持てば、インフレ要因になる。やがてインフレが過度になる。その時中央銀行は、国債を売って、通貨を市中から回収する。マネタリベースを縮小するために金利を上げる。
金利を上げるということは国債を売ることになる。国債の金利が上がると他の金利も全部上がる。そうすると借りている人が早くお金を返す。融資も減る。ベースマネーが少なくなる。マネーストックも減る。そしてインフレは抑制される。本来の中央銀行の役割。
「なんぼでも発行できるのか」日本の円が強くなる、それはいくらでもお金を発行できるが、お金を発行すると通貨の価値が下がる。
「無駄遣いいくらでもできちゃう」
→その通り。小沢さんが今までこの説明をしなかったのは、それを言ってしまうと、無駄遣いができてしまう。民主党の公約で、無駄遣いをなくすというのがあった。この説明をしてしまうと歳出削減努力がされなくなってしまう。
安倍さんは逆をやっている。マネタリーベースを吸い上げて、民間に10兆円流しますよ、というのが補正予算だった。景気が悪くなるはずがない。しかし既得権益は温存される。これがアベノミクスの本質。行政改革はなされない。
生活の党は、財源を地方公共団体に移譲することによって、地域の人たちが地方自治の中で、税金の無駄遣いを監視できるような体制をしっかり作っていくことを主張している。これを同時に行わないと、いくら景気が良くなったといっても、既得権益が温存されてしまい、問題が残ってしまう。これを良く考えなくてはならない。
通貨安になれば輸入物価が上がる。国内産業の売り上げは上がらない。国内雇用の改善につながらない。給料は増えず、物価だけが上がってしまう。これがヘリコプタークロダの死角。だから金融緩和は財政拡張政策とセットでやらないといけないという理屈になるが、だったら公共事業をやればいいのか?という話。
しかし土木事業には供給制約がある。復興需要で職人は東北へ。それ以外の地域では高い値段になる。国交省は建設の職人の値段を上げてきた。公共事業を減らしてきたから、土木事業に生涯を賭けようという人は減った。専門性も高くなって、なかなか人が入ってこない。
消費性向の強い主体に金を流さなければならない。若い人、低所得者層。それによって個人消費を増やして、経済を上向きにする。子ども手当、給付付き税額控除など、消費性向の高いところ、あまり貯蓄をしないところにお金を流していく。そのことによって個人消費を増やす。
介護の分野。重労働なのに低賃金。求人に対して求職数が少ない分野になっている。ここの報酬を上げる。しかしこの分野はカルテルのように低賃金になっている。介護の業界の問題がある。
経営者がみんな揃って低賃金で抑えている。報酬単価を上げても給料を上げることにならないのが難しいが。給料を増やす形でお金を流すことができれば、介護の分野の人材が増えて、お年寄りも安心になる。
もう一つは、成長戦略への投資。結局、お金を使うのは消費か投資しかない。投資は将来の消費に向けて、先にお金を投じて、準備をしておきましょうというのが投資。その成長分野は何か。
エネルギー。我々は脱原発を未来の党の時も言っていた。嘉田さんはあまりエネルギーだ成長戦略だ、天然ガスだ、ということは言わなかった。1月4日の日経新聞に、東芝がGEと火力発電で合弁の記事があった。三菱重工や日立と対抗。世界で新設される発電所の投資額は2035年までに850兆円の予測。
新型天然ガス発電所を作れるのは世界で3つしかない。独シーメンス、米GE、三菱重工。東芝とGEが手を組み、日立と三菱が手を組んだ。世界で3つしかないグループの2つが日本。
国債を発行して、民間に行くお金をこういうところに投資して、今、原発が止まっているから従来型の石油火力発電所を、この高効率の天然ガスコンバインドサイクル発電に変える。CO2も削減でき、安い。
世界は原発じゃなくて天然ガス。日本の古い火力発電所をリプレースして、たくさん作ることで、価格競争力を持てるようになると、世界でも勝てる。
電力業界は、脱原発したらコストがかかるというが、原発を電力会社のバランスシートから外す方向を考えてはどうか。石炭から石油にエネルギーシフトした時に、炭鉱を閉鎖するのに国がお金を出した。エネルギー政策の転換時には、国がお金を出すことに正当性がある。
しかし財務省は絶対うんと言わない。政府が金を借りると次世代への負担をツケ送りというが、そういうわけではない。政府の借金は国民の資産。しかし使用済み核燃料は、純粋にツケ送りになる。
原発は、目先はコストが安いと思うかも知れない。しかし続ければ、1基で年間20トンの使用済み核燃料が出てくる。現在でも1万7千tある。すでに行き場を失っている。倫理的な問題も問われている。
天然ガスパイプライン。先進国では自国に天然ガスパイプラインを引くのが当たり前になっている。日本の北方にはサハリンのガス田がある。パイプラインは4000㎞までだったらペイする。液化せずに運べる。サハリンから東京はわずか2000㎞。ロシアと交渉してやればいい。
これが日本の業界の問題。パイプライン引いてしまうと、その沿線では自由に火力発電所ができる。今の第二電力会社(エネットなど)は新型発電設備で安価に電力を提供している。そんなものがバンバンできてしまう。だから既存の電力業界が賛成しない、と言われている。
日本は、ハードカレンシー。世界中の人が使いたいお金は4種類。ドルとポンドとユーロと円。ユーロは問題がある。ドルもポンドも対外負債国の通貨。対外的に資産国で、かつ世界中で取引できる通貨は円だけ。円を発行できる日本だからこそできることがある。新しい技術、日本が経済力で世界に貢献できるやり方が見えている。それをやればいいだけ。
- 日本はデフォルトしない
- マネタリーベースからマネーストックにどうやってお金を流すか
- どうやって既得権益に不当にお金が流れることを防ぐのか
- 若者、低所得者層に金を流さなければならない
- 成長戦略への投資、天然ガスコンバインドサイクル発電、パイプライン
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2013年04月12日プレゼン『財務省の罠』最終版.pdf
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2013年4月12日『財務省の罠』講演.MP3
日本はデフォルトしない
日本はデフォルト(債務不履行)になりません。国債が返せない、ということになりません。自国通貨が発行できる国で、国債が暴落した場合、つまり、金利が上昇した場合、中央銀行が国債を買い入れることができる。すると国債の需要が増える。需要が増えれば価格が上がる。金利が下がる。
ギリシアの場合、ギリシアの国債を売ってユーロにすると、それでドイツの国債が買えてしまう。すると、ギリシアの国債の金利が上がり、価値は下がる。ドイツの国債の金利は下がって価値は上がる。だからギリシアが破綻する可能性が出てくる。
心配性の人「財政の信用がなければ国債は売られる、すると金利が上がる」
→国債を売って得た通貨で何を買かを考えてみる。景気が良ければ、不動産、株社債などが買われる。景気が悪かったら、これらを買っても将来の価格上昇が見込めないので、通貨のままで持っていたいのでむしろ国債を持つ。
通貨の形にもっとも近くて金利がつくものは国債。つまり景気が悪かったら国債が買われる。国債の金利は経済状況を反映するに過ぎない。
心配性の人「いや、国債を売って得た金でドルを買って海外投資すればどうなる?資本が対外的に逃げていくよ」
→円を売ってドルを買う人がいたら、ドルを売って円を買った人もいる、ということである。円を買ったら、円で買えるものを買う。通貨に金利はつかないので、国債を買う可能性が高い。
結局、景気が良くなって、他の金融商品が選ばれる状況にならない限り、国債の金利は上がらない。国債だけが単独でただ暴落するような状況はないということ。経済状況に連動して金利が変わるのが、自国通貨建ての国債。
心配性の人「でも日本はGDPの2倍も国の借金がありますよ!」→デフォルトする国はどんな国か。「国」とは、実は「政府」ではない。国の借金が1千兆円、というとき、この時の「国」は「政府」のことを言っている。「国の経済主体」は4つ。政府、金融機関、(非営利を含む)企業等、家計。
他の国に借金があれば、取り立てに合うということはある。しかし日本は、対外純資産は21年連続世界一。つまり、世界中に金を貸している。金を貸している方が借りている方から取り立てに合うことはない。政府の債務額そのものと、償還能力とは関係がない。(償還能力があれば問題がない。)
破綻している国とはどういう国か?外国通貨建てで国債を発行している国。自国の通貨で国債を買ってもらえないような国。日露戦争の時、日本が勝った原因の一つが、他国から金を借りて戦費を調達できたことがあるが、この頃は円が弱かったから、ドルやポンド建てで国債を発行した。
自国通貨が弱い国とは何かというと、対外純負債国である。他の国から金を借りている国。借りている金を引き上げられてしまうと、自国通貨が簡単に弱くなってしまう。他の国の人たちは怖がって買わなくなるので、他国通貨で発行せざるを得なくなる。
破綻の可能性がある国は、経常収支が赤字の国。貿易収支、経常収支が赤字。他国から金を貸してもらってようやく貿易収支の赤字をファイナンスできるような国。日本はまったく逆で、毎年膨大な経常収支の黒字がある。
最近赤字になっているが、エネルギー要因がある。それでも経常収支は黒字。所得収支で、過去の黒字のリターン(配当)が毎月1兆円、毎年12兆円ぐらい。貿易収支の多少の赤字は相殺される。そういう国である。
イギリスとアメリカは、例外的で、他国から金を借りている、つまり経常収支は赤字の国。貿易も赤字。しかし国債を自国通貨で発行できている。なぜなら経済的に強いから。金融立国で、他国からたくさん投資してもらって、その金を他国に投資して配当を得ている。
他国から金を借りて投資をすることで、所得収支が出て、国の収支はプラスになる。
そういう国の通貨で国債が発行されている場合、他国の人もその国債を買う。それを考えると、日本が破綻するぐらいだったら、先に対外債務超過のイギリスやアメリカが破綻するはずだが、その兆候は見えていない。
輸出力が弱くなり、日本の商品が海外で買われなくなる、通貨が弱くなる、そういう風にならない限り日本は破綻しない。経常収支が赤字になることすら、今後10年かかっても考えられない。(悪い状態が続いて)日本の製品が買われなくなるには何十年もかかるのではないか。そうなったとしても、他国に金を膨大に貸しているので、負債国になるまでにも何十年もかかる。
マネタリーベースからマネーストックにどうやってお金を流すか
「次元の違う金融緩和」というけど、金融緩和とはそもそも何か。新聞などでは、「ジャブジャブ金を刷っている」みたいな書かれ方をしているが、実際のところ、どういうメカニズムで、株価や国債の価格に影響しているのか、という説明をあまり見ない。
「政策目標をマネタリーベースにした」というのは本当のところどういうことなのか。こういうことをわからないと、黒田総裁が何を言っているのかも理解できないはずである。
通貨とは、決済手段である。現金と預金。財布に入れていて、ラーメンを食べて払う金、これが現金。クレジットカードでネット通販で買い物した時に払う金、これは預金から払う。現金と預金は、生活上、同じ機能を果たしている。これらを合わせたものが通貨と呼ばれて、決済の手段、ということである。
4つの経済主体で言うと、企業と家計が持っている通貨を合わせてマネーストックというが、このマネーストックが増えないと、景気は良くならない。民間人がお金を持って使わないと景気が良くならない。
今はそれが少ないから経済が回っていない。マネーストックを増やすための必要条件の一つがマネタリーベース。
日本銀行が提供している通貨(+政府が発行する貨幣(コイン)はマネタリーベースの一部。マネタリーベースにはもう一つ、日本銀行当座預金がある。
日銀当預とは何か。普通の市中の銀行は、自分たち銀行の決済をどっかでやらないといけない。これを日銀当預の振替で行う。中村てつじがりそな銀行から田中さんの三菱東京UFJの口座に1万円振り込むとどうなるか。中村のりそなの数字が1万減って、田中さんの口座の数字が1万増えるだけ。情報が変わるだけで、りそなの金そのものは減らない。
銀行システムというものがあって、毎日、すべての銀行間の振込を集計して、その分を日銀当預の各銀行の口座に反映する。その集計結果と、各銀行が持っている現金、これの合計が、銀行にとっての通貨である。
では日本銀行ができることとは何か?マネタリーベースを増やすということは、この日銀当預を増やすということ。銀行同士の決済に使われるお金の量を増やしているだけ。つまり、銀行にお金を渡すまでしかできない。民間の人たちが金を使えるためには、銀行から民間にお金が渡らないといけない。
銀行から民間に金が渡されると、マネーストックが増える。これを進めるには別の仕組みが必要。銀行から金を出す方法は2つある。一つは融資。もう一つは国債の発行、国債発行によって得たお金を政府が民間に渡すこと(政府支出を増やす)。
銀行が融資をするとはどういうことか?日銀当座預金の残高がないと貸せないということではない。だいたい1万倍ぐらいまでは貸せることが法律で決まっている。法定準備率という考え方。預金された金額は、すぐには引き出されないなどの理由。信用創造。
マネタリーベースをいくら増やしても、融資が行われなければ民間のマネーストックが増えない。銀行にとって預金は負債。それを基にして簡単に貸してしまって、取り立てがもしもできなかったら、預金者が金を引き上げた時に自分が債務を返せないという状態になる。だから銀行は、景気が悪い時に簡単にお金を貸さない。
銀行にとって金利が自分の売り上げとなる。金利をつけて返してもらうから、リスクマネーを貸せる。今のように景気が悪いと、自らリスクを取って貸すことができない。売り上げが少ない中で簡単に貸して、返してもらえなかったら、損を全部自分で被ることになる。
「資金循環統計」のグラフを見ると、赤い線(家計資産超過)と、青い線(政府資産超過)の間隔がしだいに狭まっているので、家計が国債を買い支えられなくなっている、というのを、最近政府が言っている。しかし紫の線が重要。赤と紫を合わせると、民間資産はどんどん増えている。この差額はどこに行っているかというと、海外への投資となっている。

それはなぜかというと、一番下(緑)の線は、企業の負債と資産の差額。企業がお金を借りないと民間の資産は増えないはずだが、バブル崩壊後、平成4年ぐらいからこの20年間、上向きになっている。企業はどんどんお金を返して、貯蓄主体になっていた。金を返しているので預金の額は減るはず。だからこういうグラフになっているということは、預金の量が減っているはず。しかし、民間が持っている預金の量は右肩上がりで上がっている。企業がお金を返しているはずなので、その期間は右肩下がりにならなければいけないはずなのに、こういう図になっている。なぜなら、預金が増えるルートは、融資だけではなく、国債の発行と財政拡張によって、民間の預金の量を増やしてきたということ。
つまり、このようなデフレで、企業がどんどん借金を返している時に、もし、国債を発行していなかったら、民間が持っているお金の量はもっと減ってもっとデフレになっていただろう。国が借金しなかったら、通貨がもっと高くなり、若者の仕事はもっと減っていた可能性が高い。
たとえば1兆円の国債を発行するとき、どういうメカニズムで民間の預金が増えるのか。民間銀行の持っている日銀当座預金の1兆円が、政府の口座に入る。民間銀行のバランスシート上、1兆円が国債に替わる。政府が1兆円の支出をする。たとえば田中さん相手に公共事業で1億円を振り込む。日銀の政府口座から、田中さんの三菱東京UFJ銀行の日銀当座預金口座に1億円が入る。結局、民間銀行から見ると、1兆円が戻ってくる。
銀行の方は、1兆円は預金なので、負債となって、バランスシート上はバランスする。政府は1兆円の国債の負債が増えた。民間は、1兆円の預金が増えた。これがマネーストックが増えたということ。企業がお金がなくて負債を返している時に、こういったことをしなければ、もっと国民の生活は苦しくなっていたはず。
どうやって既得権益に不当にお金が流れることを防ぐのか
「しかし政府はどこまでもお金を発行できるんですか、それはおかしい」
→それはその通り。民間がお金をたくさん持てば、インフレ要因になる。やがてインフレが過度になる。その時中央銀行は、国債を売って、通貨を市中から回収する。マネタリベースを縮小するために金利を上げる。
金利を上げるということは国債を売ることになる。国債の金利が上がると他の金利も全部上がる。そうすると借りている人が早くお金を返す。融資も減る。ベースマネーが少なくなる。マネーストックも減る。そしてインフレは抑制される。本来の中央銀行の役割。
「なんぼでも発行できるのか」日本の円が強くなる、それはいくらでもお金を発行できるが、お金を発行すると通貨の価値が下がる。
「無駄遣いいくらでもできちゃう」
→その通り。小沢さんが今までこの説明をしなかったのは、それを言ってしまうと、無駄遣いができてしまう。民主党の公約で、無駄遣いをなくすというのがあった。この説明をしてしまうと歳出削減努力がされなくなってしまう。
安倍さんは逆をやっている。マネタリーベースを吸い上げて、民間に10兆円流しますよ、というのが補正予算だった。景気が悪くなるはずがない。しかし既得権益は温存される。これがアベノミクスの本質。行政改革はなされない。
生活の党は、財源を地方公共団体に移譲することによって、地域の人たちが地方自治の中で、税金の無駄遣いを監視できるような体制をしっかり作っていくことを主張している。これを同時に行わないと、いくら景気が良くなったといっても、既得権益が温存されてしまい、問題が残ってしまう。これを良く考えなくてはならない。
通貨安になれば輸入物価が上がる。国内産業の売り上げは上がらない。国内雇用の改善につながらない。給料は増えず、物価だけが上がってしまう。これがヘリコプタークロダの死角。だから金融緩和は財政拡張政策とセットでやらないといけないという理屈になるが、だったら公共事業をやればいいのか?という話。
しかし土木事業には供給制約がある。復興需要で職人は東北へ。それ以外の地域では高い値段になる。国交省は建設の職人の値段を上げてきた。公共事業を減らしてきたから、土木事業に生涯を賭けようという人は減った。専門性も高くなって、なかなか人が入ってこない。
若者、低所得者層に金を流さなければならない
消費性向の強い主体に金を流さなければならない。若い人、低所得者層。それによって個人消費を増やして、経済を上向きにする。子ども手当、給付付き税額控除など、消費性向の高いところ、あまり貯蓄をしないところにお金を流していく。そのことによって個人消費を増やす。
介護の分野。重労働なのに低賃金。求人に対して求職数が少ない分野になっている。ここの報酬を上げる。しかしこの分野はカルテルのように低賃金になっている。介護の業界の問題がある。
経営者がみんな揃って低賃金で抑えている。報酬単価を上げても給料を上げることにならないのが難しいが。給料を増やす形でお金を流すことができれば、介護の分野の人材が増えて、お年寄りも安心になる。
成長戦略への投資、天然ガスコンバインドサイクル発電、パイプライン
もう一つは、成長戦略への投資。結局、お金を使うのは消費か投資しかない。投資は将来の消費に向けて、先にお金を投じて、準備をしておきましょうというのが投資。その成長分野は何か。
エネルギー。我々は脱原発を未来の党の時も言っていた。嘉田さんはあまりエネルギーだ成長戦略だ、天然ガスだ、ということは言わなかった。1月4日の日経新聞に、東芝がGEと火力発電で合弁の記事があった。三菱重工や日立と対抗。世界で新設される発電所の投資額は2035年までに850兆円の予測。
新型天然ガス発電所を作れるのは世界で3つしかない。独シーメンス、米GE、三菱重工。東芝とGEが手を組み、日立と三菱が手を組んだ。世界で3つしかないグループの2つが日本。
国債を発行して、民間に行くお金をこういうところに投資して、今、原発が止まっているから従来型の石油火力発電所を、この高効率の天然ガスコンバインドサイクル発電に変える。CO2も削減でき、安い。
世界は原発じゃなくて天然ガス。日本の古い火力発電所をリプレースして、たくさん作ることで、価格競争力を持てるようになると、世界でも勝てる。
電力業界は、脱原発したらコストがかかるというが、原発を電力会社のバランスシートから外す方向を考えてはどうか。石炭から石油にエネルギーシフトした時に、炭鉱を閉鎖するのに国がお金を出した。エネルギー政策の転換時には、国がお金を出すことに正当性がある。
しかし財務省は絶対うんと言わない。政府が金を借りると次世代への負担をツケ送りというが、そういうわけではない。政府の借金は国民の資産。しかし使用済み核燃料は、純粋にツケ送りになる。
原発は、目先はコストが安いと思うかも知れない。しかし続ければ、1基で年間20トンの使用済み核燃料が出てくる。現在でも1万7千tある。すでに行き場を失っている。倫理的な問題も問われている。
天然ガスパイプライン。先進国では自国に天然ガスパイプラインを引くのが当たり前になっている。日本の北方にはサハリンのガス田がある。パイプラインは4000㎞までだったらペイする。液化せずに運べる。サハリンから東京はわずか2000㎞。ロシアと交渉してやればいい。
これが日本の業界の問題。パイプライン引いてしまうと、その沿線では自由に火力発電所ができる。今の第二電力会社(エネットなど)は新型発電設備で安価に電力を提供している。そんなものがバンバンできてしまう。だから既存の電力業界が賛成しない、と言われている。
日本は、ハードカレンシー。世界中の人が使いたいお金は4種類。ドルとポンドとユーロと円。ユーロは問題がある。ドルもポンドも対外負債国の通貨。対外的に資産国で、かつ世界中で取引できる通貨は円だけ。円を発行できる日本だからこそできることがある。新しい技術、日本が経済力で世界に貢献できるやり方が見えている。それをやればいいだけ。
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